日本の入院医療の支払制度であるDPC。
データ提出加算でもデータ提出もDPC調査といわれ、このDPCがどういったものかを知らない方は少ないくないのではないでしょうか。
また、新しくDPC病院で働き方、DPC調査に係る仕事をされる方にとっては、少し難しい制度でもあります。
そこで今回はDPC制度、DPC調査についてそれぞれポイントを紹介していきます。
- DPCとは?
- DPCのポイント
- DPC調査とは?
※この記事は2020年診療報酬改定をもとに作成しています。
目次
1.DPCとは
1.1 DPC/PDPS
DPCとは、 Diagnosis Procedure Combination の略称で診断群分類を意味します。
実際には、この意味だけではなくDPC/PDPS (Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System) を略してDPCとして用いられていることが多いと思います。
DPC/PDPSは診断群分類包括評価で日本における医療費の定額支払制度を指します。
1.2.包括支払と出来高支払
この包括評価での支払いと対比されるのが出来高支払いです。
基本は医療行為に対して、報酬を支払うのが出来高支払いです。
それに対して包括評価での支払いは、患者の病気、手術の有無や処置の内容によって支払額決まる制度になっています。
例えば肺炎という病気で入院して、手術はしませんでした、Aという処置をしましたというと、1日あたり2000点で計算しますという形で点数が決まります(例のため、点数は適当に設定しています)
1章のまとめ
- DPC/PDPSとは診断群分類包括評価における定額支払いのこと
2.DPCのポイント
ここではDPCでのポイントとなる用語や仕組みを解説します。
2.1 包括評価の対象となるものとならないもの
1.2で患者の病気や処置の内容によって包括評価での支払い額が決まると言いましたが、すべて包括支払いに含まれるわけではありません。
包括対象になるのはホスピタルフィー的な要素(医療機関の運営や固定費にかかわる部分)になります。
逆に出来高の対象になるのはドクターフィー的な要素(手術など医師の技術的なもの)になります。
そのため、包括評価での支払いを選択している病院は包括評価での支払いがベースとなり、それに対して出来高支払いが診療行為の内容によって追加になります。
具体的に包括評価の対象となるもの、ならないものを見ていきます。
ここでは主要項目で一般的な分類を紹介したいと思います。
まずは包括評価の対象となるものです。
- 入院基本料
- 投薬
- 検査
- 画像診断
- 1000点未満の処置
続いて出来高対象となるものです。
- 手術
- リハビリ
- 麻酔
- 放射線治療
- 1000点以上の処置
上記の記載は一例です。
特に包括対象の項目は例外で出来高の項目もあるので、注意してください。
2.2 主傷病(医療資源病名)
包括評価をするにあたって、大切になってくるのは主傷病です。
診断群分類からどこに分類されるか決めるにあたり、まず最初に見るのがこの主傷病です。
DPC制度でいう主傷病とは医療資源をもっとも投入した病名になります。
入院期間を全体を通して、治療した傷病の中で最も人的物的医療資源を投入したものが主傷病となります。
入院する契機になった病気ではないところに注意したい。
2.3 医療機関別係数
DPC制度には医療機関別係数という仕組みがあります。
医療機関ごとに治療へのアプローチや設備、人員などさまざまです。
その医療機関ごとの違いを評価したのが医療機関別係数です。
平成30年度時点での医療機関別係数の考え方は基礎係数、機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ、激変緩和係数の和で決定します。
この医療機関別係数を下記のように使用して包括点数を決定します。
包括範囲の点数=診断群分類ごとの1日の点数
×医療機関別係数
×入院日数
1日の点数に医療機関別係数を掛けることができるので、医療機関別係数はDPC制度のメリットの一つと考える人もいます。
2章のまとめ
- 包括対象になるものとならいものがある
- DPCでの主傷病とは医療資源を最も投入した病名である
- 医療機関別係数は医療機関ごとの違いを評価したもの
3.DPC調査について
3.1 DPC調査
1章、2章ではDPC/PDPSの仕組みのポイントを簡単に紹介しました。
DPC/PDPSでは診断群分類ごとに包括点数が設定されています。
この分類や点数を決めるために行われているのがDPC調査です。
各医療機関で作成されているDPCデータはこの診断群分類や包括点数を決めるために収集されています。
多くの種類のデータを集めているので、診断群分類や点数以外にも日本の今後の医療方針を決めるために様々な分析にも使用されているみたいです。
病院単位でもこのDPCデータを活用して、自病院の経営に活かすといったこともされています。
3.2 DPC調査に参加する医療機関
このDPC調査に参加する医療機関は大きく2つに分類されます。
- DPC制度に参加しているDPC病院、DPC準備病院
- データ提出加算を算定する医療機関
まず、DPC制度に参加しているDPC病院は包括支払い請求をしている病院です。
そのため一番DPCに関係している医療機関とも言えます。
DPC準備病院はDPC病院となるために、データを正しく提出することができるが確認している病院です。
現状ではこのDPC準備病院に参加の届け出を行い、提出内容が認められてDPC病院になることができます。
続いてデータ提出加算を算定する医療機関です。
こちらは入院加算のため、DPC病院、準備病院、出来高病院問わず届け出ができ、届け出ている病院はDPCデータの提出が必要になります。
データ提出加算については別記事でまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://medical-information-room.com/a245_data_submission_addition/
3.3 DPCデータの提出
DPC調査では、DPCデータを作成し、期限まで提出する形になります。
ここでは作成するデータと提出の流れを見ていきます。
まずは医療機関ごとに作成するデータです。
- 様式1(入退院情報、病名情報等)
- 様式3(施設情報)
- 様式4(保険情報)
- 入院EFファイル(入院における診療報酬算定情報)
- 外来EFファイル(外来における診療報酬算定情報)
- Dファイル(包括診療明細情報)
- Hファイル(日ごとの患者状態)
- Kファイル(共通IDに関する情報)
DPC制度やデータ提出加算の算定しているものによって提出するファイルは変わってきますが、上記のファイルを作成し提出します。
これらを毎月作成し、3か月に一回、DPC調査事務局がだしている形式チェックソフトで提出ファイルを作成し事務局に提出します。
4月~6月のデータは7月に、7月~9月のデータは10月にと4半期に一回データを提出します。
3章のまとめ
- 診断群分類はDPC調査に基づいて決定される
- DPC調査に参加する医療機関は「DPC制度に参加している病院」「データ提出加算を算定する病院」
- DPC調査では調査データを作成し、4半期に1回提出する
おわりに
DPC制度、DPC調査について紹介しました。
今回は概要だけでしたので、次回以降一つずつ取り上げて詳しく見ていきたいと思います。
最後に今回のまとめです。
- DPC/PDPSとは診断群分類包括評価における定額支払いのこと
- 診断群分類はDPC調査に基づいて決定される
参考文献
DPC導入の影響評価に係る調査
調査実施説明資料
2020年度「DPC導入の影響評価に係る調査」調査実施説明資料
DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト
DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト 改定版(第4版)
診療点数早見表 2020年4月版
DPC電子点数早見表2020年4月版