医療事務や医療事務向けにソフトを作っている会社にとっては、関りが深い「データ提出加算」。
このデータ提出加算について、こんな悩みをお持ちではないでしょうか?
- そもそもデータ提出加算がよくわからない
- 算定するにあたってどんな手続きをすればいいかわからない
- なぜデータを作っているかわからない
こういった疑問にお答えするために、ここではこちらの内容について紹介していきます。
- データ提出加算とはどういう加算か?
- なぜこの加算が重要視されているか
- この加算を算定するにはどこに気を付けていけばいいか
データ提出加算をこれから算定しようと思っていて、全然わからない方にもやさしく紹介しています。
私は医療事務のシステムメーカーでデータ提出をサポートするシステム開発・コンサルの業務に従事し、お客様の対応をしてきているので、医療機関や各メーカーがよく抱えている悩みを中心にこの記事では紹介していきます。
※この記事は2020年度診療報酬改定をもとに作成しています。
2020年度のデータ提出加算については簡単ではありますが、変更点をこちらにまとめています。
目次
データ提出加算でおさえておきたい3つのポイント
まずデータ提出加算とはそもそもどういう加算か?についてです。
ここではデータ提出加算の基本的な内容を知るうえで、
- データ提出加算とはどんな加算?
- データ提出加算加算の分類と点数
- データ提出加算の重要性
この3つにポイントをおさえて紹介していきます。
ポイント1「データ提出加算とはどんな加算?」
データ提出加算は入院加算の一つで、DPCデータを正確に作成し継続して提出されることを評価したものです。
簡単に言えば、入院患者に関するデータをルールに基づいて作成し、期限までに提出すれば入院加算を算定できますよというものです。
原則入院中1回に限り、入院時に加算することができるので、例えばAさんが4/1~4/30の間で入院していれば4/1にデータ提出加算として加算点数を算定することができます。
また、2020年度の診療報酬改定以降、特定の入院料を算定している場合、90日に1回算定することができるようになりました。
ポイント2「データ提出加算の分類と点数」
データ提出加算は「データ提出加算1」「データ提出加算2」「データ提出加算3」「データ提出加算4」に分かれています。
データ提出加算1,2は入院初日に算定するもので、データ提出加算3,4は90日に1回算定できるものになっています。
また、分類としてデータ提出加算1,3は入院データを提出するもので、データ提出加算2,4は入院データ+外来データを提出する形で分類することができます。
それぞれの項目に点数が設定されていて、下記の点数が設定されています。
データ提出加算1(入院初日)
イ 許可病床数が200以上の場合 140点
ロ 許可病床数が200未満の場合 210点
データ提出加算2(入院初日)
イ 許可病床数が200以上の場合 150点
ロ 許可病床数が200未満の場合 220点
データ提出加算3(入院期間が90日を超えるごとに1回)
イ 許可病床数が200以上の場合 140点
ロ 許可病床数が200未満の場合 210点
データ提出加算4(入院期間が90日を超えるごとに1回)
イ 許可病床数が200以上の場合 150点
ロ 許可病床数が200未満の場合 220点
提出データ評価加算 40点
点数が200床未満のほうが高いのは、小さな病院までDPCデータの提出・収集を厚労省が推進しているからとのことです。
これ以降はデータ提出加算1をメインにお話していきますが、データ提出加算2や1と2の違いが気になる方は下記の記事をご覧ください。
また、2018年に新設された提出データ評価加算が気になるという方はこちらの記事も併せてご覧ください。
ポイント3「データ提出加算の重要性」
なぜこのデータ提出加算が重要視されるのか?
なぜDPCデータを作成する作業を行ってまで、このデータ提出加算を算定するのか?
そういった疑問を持たれる方は多いと思います。
結論としては算定することで点数がとれるのはもちろんありますが、他の入院料の算定に必要となるからです。
後ほど紹介もしますが例えばA100急性期一般入院料を算定しようとすると、算定の届け出の条件に「データ提出加算を算定していること」があります。
基本的な入院料を算定できないと、入院医療がまともに機能しなくなるので、多くの病院がこのデータ提出加算を算定しています。
ここ数年でデータ提出をしていることが様々な入院料算定の条件になってきているため、年々このデータ提出加算は重要性は上がってきています。
データ提出加算の施設基準でおさえておきたいポイント
データ提出加算にかかわる施設基準でおさえておきたいポイントを紹介していきます。
最初にデータ提出加算を算定するための施設基準を、その次にデータ提出加算が算定に関わる入院料を紹介します。
ポイント1「データ提出加算の施設基準」
詳細は細かい部分もあるので告示3 基本診療料の施設基準等を読んでいただきたいのですが、データ提出加算を算定するのに必要なポイントは大きく二つです。
- A207診療録管理体制加算を算定している
- DPCデータを提出できる体制が整っている
1点目は記載の通りで医療機関の診療データを管理して算定できる診療録管理体制加算を算定していることが一つ目の要件です。
診療録管理体制加算について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
2点目について入院データであるDPCデータを作成し、継続的に提出できるかか要件です。
DPCデータの作成については、この後次章で紹介していきます。
ポイント2「データ提出加算の算定が要件になる入院料」
こちらも経過措置等の例外もあるので、詳細は施設基準を読んでいただきたいのですが、データ提出加算が算定条件に入ってる入院料は下記です。
- 急性期一般入院料
- 特定機能病院入院基本料(一般病棟7対1、10対1)
- 専門病院入院基本料(7対1、10対1)
- 地域包括ケア病棟入院料
- 回復期リハビリテーション病棟入院料
- 療養病棟入院基本料
2020年の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料5、6または療養病棟入院基本料の200床未満が入院料算定の要件にデータ提出加算を算定することが新規に追加になりました。
上記に関して2020年診療報酬改定では2つの経過措置が設けられています。
- 令和2年3月31日時点で、療養病棟入院基本料、回復期リハビリテーション病棟入院料5又は6の届出を行っている病棟(許可病床数が200床未満の医療機関に限る。)については、令和4年3月31日での間に限り、データ提出加算に係る施設基準を満たしているものとみなすことができます。
- 令和2年3月31日時点で、療養病棟入院基本料、回復期リハビリテーション病棟入院料5又は6の届出を行っている病棟の病床数の合計が200床未満(令和2年3月31日時点で、病床数に関係なくデータ提出加算が要件となっていた急性期一般入院基本料等の入院料等の届出を行っている病棟を有している医療機関を除く。)であり、かつ、データ提出加算の届出を行うことが困難であることについて正当な理由があるものに限り、当分の間、データ提出加算に係る施設基準を満たしているものとすることができます。
経過措置はあるものの、2020年の診療報酬改定でデータ提出を求める入院料が増えており、今後も拡大が予想されます。
算定の準備にあたって知っておきたい2つのポイント
データ提出加算を算定するにあたって、準備がいくつか必要になってきます。
準備をするために「どういったデータを作成していけばいいか」、また「算定までにどういうステップを踏むのか」、そういった疑問にここではお答えします。
ポイント1「作成・提出するデータはDPCデータ」
算定条件にもはあるDPCデータの提出。
このデータ作成・提出が医療事務の仕事の一つでもあります。
DPCデータは簡単に言えば入院に関するデータのことです。
DPCファイルは様々な種類がありますが、データ提出加算1では最低でも下記のファイルの提出が必要です。
- 様式1(入退院情報、病名情報等)
- 様式3(施設情報)
- 様式4(保険情報)
- 入院EFファイル(入院における診療報酬算定情報)
- Hファイル(日ごとの患者状態)
- Kファイル(共通IDに関する情報)
これらのデータを 提出期限までに作成し、遅延なく提出できることが算定条件になります。
DPCデータについてもっと詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
ポイント2「算定までの流れ」
データ提出加算を算定までの流れについて、ポイントにはなりますがここでは紹介します。
流れを簡単にまとめると、
- 様式40-5を提出
- 試行データを作成して、提出する
- 試行データが正しく作られていることが認められる
- 様式40-7を提出
- データ提出加算及び本データを提出する
この流れの中でポイントになるのはこちらの2点です。
- 様式40-5、様式40-7を提出期限までに出す
- 試行データを作成する
一つ目はのポイントは簡単に言えば算定の申し込みです。
提出期限は年4回あるので、それを把握して提出してください。
参考に様式40-5の2020年の締め切りを掲載します。
- 第1回 2020年5月20日
- 第2回 2020年8月20日
- 第3回 2020年11月20日
- 第4回 2021年2月22日
続いて、2つ目の試行データの作成についてです。
この試行データは2か月分のデータを作成して提出することになります。
この期間ではちゃんとデータが作れるかどうかの確認期間です。
ここではじめてデータを作る医療機関も多いので困惑されるところも多いと聞きます。
DPCデータの仕様は年々複雑になっているとのことで、慣れるまでは時間がかかることが予想されます。
データの作成は基本的に厚労省が配布しているソフトや各メーカーが販売しているソフト用いて作ることになるので、事前にソフトは準備しておくことをおすすめします。
試行データを作成するタイミングを決め、それに間に合うように様式40-5の提出、データの作成ソフトを事前に準備して、試行データの作成・提出に臨みたいところです。
※様式40-5のフォーマットや算定の流れの詳細は厚生労働省のホームページ等でご確認ください。
まとめ:データ提出加算で知っておきたいポイント
データ提出加算で知っておきたいポイントを紹介してきました。
データ提出加算は医療経営、医療事務、医療事務向けソフトの開発メーカーなどさまざまな人に関わる入院加算です。
この加算の重要性は年々あがっているので、しっかりとポイントを押さえて日々の業務をしていきたいものになります。
最後に繰り返しにはなりますが、全体を通してのポイントのまとめです。
- データ提出加算は多くの入院料の算定に必要となる入院加算
- 算定には「診療録管理体制加算」と「DPCデータの提出体制が整っている」が必要
また、今回は簡単に紹介になってしまった「データ提出加算2」「提出データ評価加算」や「DPCデータ」については別記事で紹介ていますので、こちらも詳しく知りたい方は下記をご確認ください。
データ提出加算2や1と2の違いについてもっと知りたい方はこちら。
2018年に新設された提出データ評価加算が気になるという方はこちら。
DPCデータについてもっと詳しく知りたい方はこちら。
参考資料
告示3 基本診療料の施設基準等
保医発0305第2号 基本診療料の施設基準等及びその届け出に関する手続きの取り扱いについて
令和2年度データ提出加算に係る説明資料
診療点数早見表 2020年4月版